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■不断の備えと防災意識気象変動の脅威に備えよ
 今から95年前の大正12年9月1日(現在は防災の日)は関東大震災が起きた日で、神奈川県および東京府(現東京都)を中心に壊滅的な大打撃を受けました。以来、まちの復興と共に全国的な防災事業が脈々と続けられてきました。しかし、地球温暖化や異常気象によって災害の規模が年々大きくなり、従来の防災インフラだけでは十分な防災効果が得られない状況が見受けられます。また阪神淡路大震災や熊本地震での教訓をふまえ、今後想定されている首都直下大地震や南海トラフなどの巨大地震に対応するため、防災施設の充実と共に地域の人々の不断の備えや防災意識が必須となってきます。

 昭和49年9月の台風16号による多摩川水害(狛江水害)で、堤防が決壊し狛江市の民家19戸が流出(濁流に家屋が流されるシーンは後にテレビドラマ『岸辺のアルバム』に使用されている)した災害は私の脳裏に深く刻まれています。山梨県・東京都・神奈川県の境を流れる多摩川流域ではこれまでも度々水害が起きています。4年前の鬼怒川のように堤防が決壊したケースもあり、堤防があるから安心という事にはなりません。近年局地的な集中豪雨の多発や、都市化の進展に伴う浸水被害の増大が想定されていますが、想定はあくまでも想定であって、昨年7月の西日本豪雨では、土石流と河川の氾濫によって229人が犠牲となってしまいました。積乱雲が次から次へと列をなした線状降水帯が想定外の大雨を降らせました。また京都府の桂川日吉ダムで毎秒約900トンの放水を始めた事により川の水位が急上昇し氾濫してしまいました。これはダムの放流を効果的に成しえなかった人為的ミスの要素があります。これまで造られたダムや堤防は従来の気象パターン等をふまえて生まれたもので気候変動を勘案したものではありませんでした。今日異常気象による降雨量が著しく増加している中、堤防のかさを上げるなどの対策を進めるハード面の整備が重要となりましすし、市民の防災意識の向上などと並行してのソフト面の充実も欠かせません(別表参照)。また、首都圏では10センチ位の積雪で交通機関が麻痺状態となり、その影響も大きなものとなります。まずは自分の住む地域はどのようなリスクがあるのかハザードマップで確認し、自分のまわりにある危険を知り備える事が非常に重要です。

 川崎市では阪神淡路大震災や熊本地震の教訓をふまえ、今後想定される巨大地震に対応するため市内の旧耐震基準の特定建築物や住宅に加え、崖地等の安全性の確保に向け耐震化を進めると共に橋梁等の耐震対策を計画的に進めています。建築物については平成28年3月に改定した「耐震改修促進計画」に基づき、各種助成制度を適用し、旧耐震基準の特定建物及び住宅の改修等を促進しています。宅地の耐震化については、地震による宅地の影響を調査し大規模盛土による造成地の震災被害を軽減するための取り組みを推進しています。あわせて崖崩れ等による被害を未然に防止するため老朽化した擁壁の改修もすすめています。

 高い確率で発生する可能性がある首都直下型地震やゲリラ豪雨、毎年発生する台風などいつどこで起こるか分からないさまざまな災害に対応して、かけがえのない市民の生命や財産を守るための市民の防災意識を高め、いざという時に互いに助けあえるよう公助だけでなく自助・共助・互助の取り組みを確認し防災ネットワークづくりを進める事が求められています。日頃から顔の見える地域社会を構築し住みなれた地域で幼子や高齢者、障害のある人や誰でもが安心してすこやかなに暮らすことができ、生き生きと生活できる環境の整備をしっかりと進めてまいります。大規模災害に耐えられるまちづくりは急務であります。