議会リポートに戻る
■民主主義の衰退・危機地方議会議員のなり手不足
 選挙は民主主義の礎であり、民主主義は多様な意見や少数意見が反映され成り立ちます。民主主義の根幹をなす選挙に於いて、有権者の大切な一票が投じられず選挙が行われなくなれば、有権者の審判を受けない議員が誕生する事になります。

 川崎市では、前回(平成27年)の県議会議員選挙において2つの区で候補者が定数と同数となり、無投票となりました。その前の2回の県議会議員選挙(平成23年及び19年)でも、無投票となる選挙区が市内7区中1区ずつありました。有権者の投票行為が実施できない事態が続いています。

 さて、本年4月に行われる統一地方選挙を展望すると、現時点(1月22日)で定数割れの区を含め、無投票になる可能性が高い区が見受けられます。投票という選択の機会が発生しないという事は、「市民が主役」であるべき民主主義の根幹を揺るがす極めて残念な事態であります。また、新聞報道によると「3カ月後に迫った統一地方選挙の神奈川県議会選挙では全48選挙区のうち約30近くの選挙区で候補者が定数を超えず無投票となる可能性」との記事がありました。地方創生の推進とともに人口減少や少子高齢化への対応は、我が国にとって真剣に考えなければならない重要かつ喫緊の政治課題となっており、地方議会の果たす役割と責任は年々増しています。

 このような状況の中、地方議会は今まで以上に地方行政の諸課題について住民の意見をくみ取り、スピード感をもって的確に執行機関の監視や政策提案を行う事が求められています。地方分権改革が進展する事に伴い、地方議会の役割と責任が高まる一方、我が国の人口減少と高齢化が加速し、議員のなり手不足は市町村にとっては重大な課題となっています。

 これらに鑑み、地方議会議員のなり手不足はゆゆしき事態であり、民主主義の衰退であり、民主主義の危機であります。このため、地方議会自らが継続的な自己改革に取り組み、議会の魅力を高め、議会への多様な人材の参画を促し、議会の権能(権利を主張し行使できる能力)を強化する制度改正を行い、諸問題の解消に向け取り組むことが必要であります。特に今後は、無投票となり有権者の選択の機会が奪われないように、議会参画を促す環境整備が必要となります。

 いくつか例を挙げると、地方議会議員は議会活動のほか、地域における住民ニーズの把握など様々な活動を行っており、特に近年都市部では専業化が進んでいます。一方では、専業者に占めるサラリーマンの割合は約9割に達しています。地方議会議員のなり手もサラリーマンからの転身者が増えているので、議員の兼業禁止に関わる「請負」の再整備や明確化、その他所要の見直しを行い、兼業禁止に係る規定が立候補の過度な規制とならないようにする事や、議員の立候補及び議会・議員活動のための休暇や休職制度、議員退職後の復職制度の整備、女性や若者を含め幅広い層から多様な人材を確保するための労働法制の整備も必要です。また、子育て世帯の議員に対する育児手当の支給や議会内における保育環境の整備、障害のある議員に対するバリアフリー化等施設整備も考えられます。

 権能強化の一つとして、地方議会議員の職責・職務について規定する地方議会議員の法的な位置づけを明確にする事も挙げられます。さらには国民の幅広い層からの政治参加や地方議会における人材確保の観点から、厚生年金への地方議会議員の加入のための法整備を早急に実現させる事も必要ではないでしょうか。厚生年金の加入は、市町村合併の急速な進展等により議員数が激減し、同年金の財政が立ち行かなくなったため、平成23年6月1日に年金制度が廃止されました。議員特権との批判を受け廃止となったものではありません。一般の会社員、首長、地方自治体職員と同様に既存の厚生年金に加入できるようにするものです。

 以上のように、地方議会議員のなり手確保を進めていく上で、議員定数の見直しなど議員自らが無駄を廃し緊張感をもって切れ目のない行財政改革を進めていくことはもとより、151万川崎市民の付託に応えられる議会活動を進めて参ります。