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■教科書採択について
◆松原成文
 本年は、平成27年度使用開始の小学校用教科書の採択手続が行われる年となっております。沖縄県の竹富町では教科書問題もありました。また、領土問題、歴史問題、憲法解釈などからも、教科書の記載内容、採択方法等は、市民にとって、また国の内外にとって非常に大きな関心事となっていると思います。そこで、改めて教科書採択について意見を述べて質問をさせていただきたいと思いますが、まず初めに、本市の小学校教科用図書の変遷について伺います。教科用図書の種目において、同一の教科書会社の教科書が長期にわたり継続的に採択されている期間についてお伺いをいたします。
◎渡邊直美教育長
  教科書の変遷についての御質問でございますが、小学校使用の教科書については、国語は昭和46年度から現在まで44年間光村図書出版、社会は昭和43年度から現在まで47年間教育出版、算数は昭和40年度から現在まで50年間教育出版、理科は昭和49年度から現在まで41年間新興出版社啓林館の教科書を採択したことを確認できるところでございます。以上でございます。
◆松原成文
 そこまでは確認できたんだけれども、それ以前はどうだったかということはまだわからないわけでありますけれども、本市の小学校においては、同一教科書を、国語は44年間、社会は47年間、算数が50年間、理科は41年間採択されているということでありますけれども、このことについてお伺いしますが、従来どおり、最終的に子どもの実態に合った教科書を選定しているという答弁が来ると思うのでありますけれども、あえて市長、教育長にお伺いいたします。
◎市長(福田紀彦)
  教科書採択についての御質問でございますけれども、教科書採択の権限は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律に基づき教育委員会にございますので、教育委員会が児童生徒にとって最も適したものを採択していると捉えております。以上です。
◎渡邊直美教育長
  教科書採択についての御質問でございますが、教科書採択は、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律に基づき、通常4年に一度採択がえを実施しており、児童生徒にとって最も適した教科書を採択しているところでございます。教育委員会では、教科用図書選定審議会の調査研究報告等を参考にする一方、教育委員会の責任と権限において独自の視点から調査研究を行っておりまして、結果的に同一発行者の教科書が採択されたところでございます。以上でございます。
◆松原成文
 これは何回もやっているんですけれども、もう教育委員会の思考停止、前例踏襲、事なかれ主義、こういったことを感じてしようがありません。  そこで伺いますが、現在、本市の小学校2年生の国語の教科書にスーホの白い馬という物語が掲載されています。この掲載には事実を誤認する表記があります。作者におおつかゆうぞうとありますが、出典はモンゴル民話であって、大塚勇三氏のオリジナルの作品では断じてありません。しかし、子どもたちはこの作品が日本人の作家が考えたものと学んでおります。見解を伺います。また、主人公の名前はスーホです。モンゴルには、文法上、スーホやスーホーという名前はありません。今も昔もスーホという名前は存在しないのであります。見解を伺います。
◎渡邊直美教育長
  スーホの白い馬についての御質問でございますが、作者につきましては、昭和46年度はモンゴルの民話、昭和49年度からはモンゴルの民話、おおつかゆうぞう訳となり、昭和52年度からおおつかゆうぞうと記載されております。昭和49年度からの変更におきましては、以前は原作者のみが記載されておりましたが、出版社の方針により訳者についても示すようになったと伺っているところでございます。また、昭和52年度からの変更におきましては、最初の原典が絶版となり、大幅に加筆し直した新しい原典に変更されたことに伴うものと伺っているところでございます。次に、主人公の名前につきましては、モンゴルの民話をもとに翻訳者がスーホと名づけたものではないかと捉えております。以上でございます。
◆松原成文
 ありがとうございます。答弁をいただきましたけれども、スーホの白い馬の作者が大塚勇三と紹介されるに至った経緯については、どのような議論があり、誰によって変更されたのかが大変疑問が残るところであります。それと、モンゴル大使館によりますと、名前がスーホと発音されるのは現在の中華人民共和国の内モンゴル自治区に当たる地方であって、この作品のもとになった民話自体が現在の内モンゴル自治区に当たる地方で広く語られて親しまれてきたとのことであります。つまり、中国、ロシアの間に位置するモンゴル国ではなく、中国の内モンゴル自治区の物語だとすれば誤りではないという見解だそうでございます。モンゴルであってモンゴル国ではない物語、このスーホの白い馬は、解釈というフィルターを使用しないと成立しない物語ということを申し述べておきたいと思います。  現在、アジア諸国は微妙な緊張感の中にあります。教育基本法が改正され、新しい学習指導要領が定められてから初めて検定された教科書は、領土や歴史について政府の主張している立場が記述されるようになりました。自国の主張を教科書に反映するのであれば、なおさら外国の文化や習慣にかかわる内容を教科書に掲載する際には十分検証すべきと思いますが、見解を伺います。
◎渡邊直美教育長
  教科書の領土や歴史の記載についての御質問でございますが、平成26年1月に中学校学習指導要領解説及び高等学校学習指導要領解説の一部改訂が行われ、領土や歴史につきましては、その位置や範囲、国際法上、正当な根拠に基づき画定した経緯に触れることが示されたところでございます。社会科、地理歴史科、公民科の教科書につきましては、学習指導要領に示された目標を踏まえて、平和で民主的な国家、社会の形成者としての資質を養うことなどが狙いとされております。国際社会に主体的に生きるためにも、我が国の歴史や文化などの理解の上に他国、他地域との協調関係を築いていく態度の育成は重要であると考えております。以上でございます。
◆松原成文
  教科書採択には記述内容とは別にもう一つ大きな留意すべき点があります。それが長期採択であります。与党自民党は、平成25年6月25日の教育再生実行本部中間まとめにおいて、教科書採択については、特定の教科書を長期にわたって使い続ける地域が見られるなど、教育委員会が入念な調査研究に基づいてその権限と責任を十分に果たしていないのではないかとの批判があり、地域によっては、長年にわたり特定の教科書発行者の教科書が採択され続けている現状に対して検討を加えるという決議がなされました。このことについての見解を市長及び教育長に伺います。
◎市長(福田紀彦)
 教科書採択についての御質問でございますけれども、教科書採択につきましては、教育委員会が関係法令に基づき適切に実施しており、結果的に同一の教科書が採択されているものと捉えております。以上でございます。
◎教育長(渡邊直美)
 教科書採択についての御質問でございますが、本市の採択におきましては、各教育委員が調査研究報告書等を参考にして、長期間にわたって各教科書の内容を確認、研究するとともに、採択の審議におきましては、長時間における慎重な協議を経るなどして、教育委員会がその責任と権限のもと、公正かつ適正に取り組み、児童生徒にとって最も適した教科書を採択しているところでございまして、その結果といたしまして同一の教科書を採択しているところでございます。今後も、教育委員会におきましては、責任と権限において児童生徒にとって最も適した教科書を採択してまいりたいと考えております。以上でございます。
◆松原成文
 意見要望にいたしますけれども、答弁につきましては予想どおりの答弁ということでございまして、いずれにいたしましても、採択の選定審議会の構成員、あるいはまた、これがほとんど教育関係者、学校関係者、外部の意見が入らない仕組みになっております。言いかえれば、実績を踏襲した採択になりやすいのは当然ではないかと私は思います。私はこの人選を見るとき、今後も同じ教科書が採択され続けると思います。構成員にもっと外部の人材を入れるなど、さらなる透明性を高めていただきたいと思います。教科書採択は市民の大きな関心事になっています。不自然な長期採択が続くことは、教師の不勉強を許してしまうことだけにとどまらず、出版社と採択関係者の癒着が疑われることにもなりかねないということを申し上げまして、質問を終わります。